日本語を学ぶ

まことさんは、28歳です。東京で働いているサラリーマンです。

まことさんのおじいちゃんは、81歳です。病気で入院中です。

まことさんは、久しぶりに、病院へ顔を見せにきました。

すると、おじいちゃんが、突然こんなことを言い出しました。

「私は、もうすぐ死ぬだろう。人生はあっという間だった。

　あんなに小さかったまことがこんなに大きく立派になった姿を見られているだけで幸せ者だよ。」と。

まことさんも、おじいちゃんに伝えたいことがありました。

「ゆり、おいで。」

まことさんが、そう言うと、可愛らしい女性が入ってきました。そして、その女性が挨拶をしました。

「はじめまして、ゆりと申します。」

「じいちゃん、おれ、ゆりさんと結婚する。」とまことさんがいいました。

結婚の話を聞いて、おじいちゃんは、嬉しくて涙が出てきました。

そして、おじいちゃんはこんなことを言いました。

「人は、欲がたくさんあって 競争の世界 に気づくと流されてしまう。でも、こうやって死期が近づくと気が付くんだ。何よりも大切なのは、愛する人なんだと。だからどうか、ゆりさんを大切にな。」

まことさんは、強くうなずきました。

それから1年半経ったころ、まことさんとゆりさんの間に元気な男の子が生まれました。

そのころ、おじいちゃんは、いつ亡くなってもおかしくない状況でした。

赤ちゃんが退院すると、すぐに、おじいちゃんに会わせにいきました。

おじいちゃんは、ゆっくり目をあけて赤ちゃんをみました。

かすかに、笑ったような顔をみせてくれました。

その翌日、まことさんのおじいちゃんは亡くなりました。

まことさんは、こう思いました。

「欲や、競争の果てに手に入れるものは、世界中にいくつでもある。でも、愛する家族の代わりはいない。じいちゃんの言う通りだ。おれは、じいちゃんが大好きだった。もっと会いに行けばよかった。これからは、競争に振り回されず、ゆりやこの子を大切にしていこう。」