日本語を学ぶ
ジェーケーローリングさんのスピーチ④
お話を聞いてみましょう。
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さて、私が2番目のテーマに「想像力の大切さ」を選んだのは、私の人生の再スタートにおいて、大きな役割を担ったからだと思うでしょう?
しかし、それだけではありません。
子どもが寝る前に物語を聞かせる価値は、死ぬまで言いますが、それよりもっと広い意味で「想像力の大切さ」を学びました。
想像力は変幻自在に思い描ける人類の能力で、それにより発明やイノベーションがうまれるのです。
そして、それだけではなく、想像力は他人の経験を共感させてくれるものでもあります。
私の人生で最も貴重な経験の一つは、ハリーポッターを書くよりも前のことですが、ハリーポッターを書く時にも役立ちました。
この経験は20代前半の若い頃に仕事で得られました。
昼休みに職場を抜け出して小説を書きつつ、ロンドンにあるアムネスティ・インターナショナル本部のアフリカ調査部で働いて生計を立てていました。
そこの小さなオフィスで、殴り書きされた手紙を読みました。
それらは、発覚すれば投獄される危険を冒しながら、自分たちに起こっている拷問や誘拐、行方不明者のことを世界に知らせるため、独裁政権のもと、こっそり持ち出した手紙でした。
跡形も残さず行方不明になった人達の写真や拷問の傷の写真も見ました。
それらは家族や友人によって送られてきたものです。
私の同僚には投獄されたことのある元政治犯も多くいました。
故郷から追われたり、亡命したりした人達でした。
なぜなら、政府にとって都合のよくない発言をしたからです。
オフィスへの訪れてくる人の中には情報提供のためや、祖国がどうなっているかを知るために来る人達がいました。
あるひとりのアフリカ人のことを忘れることはできません。
当時の私と同年代のアフリカ人の彼は、母国で拷問に耐え抜いた結果、精神を病んでしまいました。
彼は自分が受けた残虐な行為のことを、ビデオカメラに向かって話しましたが、そのとき、体の震えが止まらない様子でした。
彼は私よりも30センチくらい身長が高かったですが、弱々しく子どものように見えました。
彼を地下鉄の駅まで送り届けたとき、残虐な行為によって人生を壊されたのに、とても丁寧に私の手を取り、将来の幸せを願ってくれました。
私はまた、廊下を歩いていた時、閉じた部屋から聞こえてきた恐怖と苦痛の叫び声を一生忘れることはないでしょう。
女性調査員の彼女が、祖国の政権を批判したことへの報復として、彼の母親が捕まり処刑されたことを、やむを得ず彼に伝えたところだったのでした。