日本語を学ぶ

あかひげ先生

はなしいてみましょう。

あかひげ先生
  • 4分30秒
  • 0361100712

むかしむかし、江戸に小石川診療所というのがあって、


赤ひげ先生という有名な名医がいました。


この赤ひげ先生はとても優しい人で、貧乏な人からはお金を受け取らず、


また、他の医者が嫌がる様な病気の人でもこころよく診てくれるのです。


なので、たくさんの人から頼りにされていました。


ある晩の事、そんな赤ひげ先生の所へ、一人のおばあさんが杖をついてやって来ました。


なんでも、おばあさんの息子にとても悪い癖があるそうです。


おばあさんは先生にその癖を治してほしいとお願いしました。


先生はどんな癖を持っているのかおばあさんにきくと、


「息子には泥棒の癖があって、いつか捕まって大変な目に会うのではないかと思うと、


この先、安心して死ぬ事も出来ません。」


さすがの赤ひげ先生も、泥棒を治す薬は持っていません。


赤ひげ先生は、自慢のあごひげをなでながら考えていましたが、


すぐに粉薬をつくって、紙に包んで持って来ました。


「おばあさん。息子が泥棒に入りたくなったら、すぐにこの薬を飲ませなさい。


 きっと、泥棒が出来なくなるはずだ。 それを何度か繰り返せば、そのうちに泥棒癖も治るだろう」


「ありがたや、ありがたや」


 おばあさんは赤ひげ先生に何度も頭を下げると、喜んで帰って行きました。


 


さて、この出来事を奥から見ていた赤ひげ先生の弟子たちは、


感心した様子でどんな薬をつくったのか尋ねました。


すると、赤ひげ先生は、


「ん、お前たちも良く知っている薬だぞ。


薬というものは患者の症状に合わせて、医者がそれに見合った薬を選ぶのじゃ。


お前も医者になったつもりで、わしがどんな薬を出したか考えてみなさい」


と、言いました。


弟子たちは頭をひねって考えましたが、泥棒を治す薬なんて見当もつきません。


すると赤ひげ先生は、ひげをなでながら言いました。


「わしは、肺臓(はいぞう)をかわかす薬を包んでやったんじゃ。


肺臓をかわかすと、咳(せき)が出るだろ。


咳がゴホゴホと出れば、泥棒どころではないからな。」


それを聞いた弟子たちは、やっぱり赤ひげ先生は日本一の名医だと思ったそうです。