日本語を学ぶ
キツネのしかえし
お話を聞いてみましょう。
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むかしむかし、村人から家族の病気かいふくのお祈りを頼まれたたろうが村へ出かけて行く途中、川の草むらで一匹のキツネが昼寝をしているのに出会いました。
たろうはおどろかそうと、キツネの耳に、ほらがいふきました。
驚いたキツネは飛び上がったはずみで、川に転げ落ちてしまいました。
それを見たたろうは、お腹を抱えて大笑いです。
さて、たろうは間もなく、お祈りを頼まれた家に到着しました。
すると主人が、落ち込んだ顔で出て来て言いました。
「残念ながら、おいでいただくのが一足遅く、病気の女房が死んでしまいました。人を呼んで来る間、留守をお願いいたします」
たろうがとまどっていると、
「では、頼みましたよ。女房は奥の部屋です。せめて女房が成仏出来る様に、お祈りの一つもあげてください」
主人はそう言うと、どこかへ行ってしまいました。
「何とも、嫌な事を頼まれたものだ。だが、仕方がない」
たろうが奥の部屋に行ってみると、部屋の真ん中にびょうぶが置かれていました。
そのびょうぶの向こうには死んだ女房が寝ているのですが、
たろうは気味が悪くてびょうぶの向こうに行く気がしません。
「早く、帰って来ないかな」
たろうが主人の帰りを待っていると、
突然、びょうぶがガタガタと動き出しました。
たろうはビックリしました。
するとびょうぶがガタンと倒れて、
その向こうから死んだはずの女房が髪を振り乱しながら近寄ってきました。
「あなたが、もっと早く来ていれば、わたしは死なずにすんだのに。・・・うらみますよ」
恐ろしさに腰を抜かしたたろうは、後ずさりしながら死んだ女房に謝りました。
「すまん、おれが悪かった。謝る。謝るから、もう近寄るな」
そして、どんどん後ずさりしていったたろうは、
急に床がなくなるのを感じて、そのまま川の中へドブーン!と、落ちてしまいました。
「あれ? ここはどこだ?」
辺りを見回すと、たろうが落ちたのはキツネをおどかした川の中です。
さっきまでいた家は、どこにもありません。
たろうは、ようやく気づきました。
「そうか、おれはさっきほらがいでおどかしたキツネに、仕返しをされたのか」
その頃、たろうにお祈りを頼んでいた家の人たちが、
たろうが来るのが遅いので迎えに出てきました。
そして川の中にいたたろうを見つけて、たろうから事情を聞いた家の人たちは、
「キツネに化かされる様なたろうでは、お祈りをしてもらっても無駄だ」
と、言って、たろうに頼んでいたお祈りを断ったそうです。