日本語を学ぶ
赤い靴
お話を聞いてみましょう。
- 4分40秒
- 0361100714
むかしむかし、カーレンという、かわいらしい女の子がいました。
カーレンは、お母さんと二人暮らしをしていましたが、お母さんが病気で亡くなってしまいました。
お葬式の日、カーレンが泣いていると、お金持ちのおばあさんが、通りかかりました。
おばあさんはカーレンをかわいそうに思って、牧師さんにいいました。
「わたしに、その子の世話をさせてくださいませんか」
こうしてカーレンは、おばあさんの家で暮らすことになりました。
それからカーレンは、勉強をしたり、お裁縫をならったりしながら、おばあさんと楽しく暮らしました。
ある日、女王さまがお姫さまをつれて、町へ来ました。
カーレンも家の前からお姫さまを見ました。
お姫さまは、美しいまっ赤な靴を履いていました。
カーレンは、そのまっ赤な靴の美しさを、忘れられませんでした。
それから、何年か経ち、カーレンも、大人になる年ごろになりました。
そんな頃、カーレンは靴屋で、お姫さまの靴にそっくりな赤い靴を見つけました。
カーレンが、その靴を欲しがっていることがわかったので、おばあさんは、その靴をカーレンに買ってあげました。
「おばあさんありがとう。これを履いて、教会へ行ってみたいわ」
それを聞いたおばあさんは、カーレンに注意しました。
「カーレン。教会は黒い靴をはいて行くものです。赤い靴で行ってはいけませんよ」
「・・・はい」
けれどカーレンは、その言いつけを守りませんでした。
おばあさんが重い病気にかかって、寝こんでしまうと、いつもいつも、赤い靴をはいて教会へいきました。
教会ではみんなが、うらやましそうに自分の靴を見ているように思えて、とてもうれしくなりました。
ある日、カーレンは、ダンスパーティーに招かれました。
パーティーに行きたいカーレンは、苦しそうに寝ているおばあさんの看病もしないで、赤い靴をはいて、パーティーに出かけようとしました。
ところが歩き出したとたん、足が勝手に動いて、ダンスを踊り出したのです。
「わあ、とまらない、とまらないわ!」
やめようと思っても、自分ではどうにもなりません。
そのまま、踊りながら町を出て、暗い森の中へ入っていきました。
すると気味の悪い魔法使いのおじいさんがたっていて、
「なんと綺麗なダンス靴だ」
と、言うと、カーレンの踊りは、激しくなりました。
そしてそれから、カーレンは昼も夜も、晴れた日も雨の日も、森や野原を踊りつづけました。
フラフラになって、やっと家のそばまで踊りながら着いた時、おばあさんのお葬式が行われていました。
カーレンは、胸がはりさけそうになって、泣き出しました。
あの優しかったおばあさんが死んでしまったのは、自分のせいだと思ったからです。
「ああ、おばあさん、ごめんなさい。ごめんなさい……。」
カーレンの心は、後悔とお詫びの気持ちでいっぱいになりました。
その時、あたりまばゆい光がさしてきました。
そして光の中に、まっ白い服をきた天使がいて、カーレンにほほえみかけました。
すると、あの赤い靴がカーレンの足から脱げて、カーレンの踊りがようやく終わりました。