日本語を学ぶ

金のオノ、銀のオノ

はなしいてみましょう。

金のオノ、銀のオノ
  • 3分55秒
  • 0361100711

むかしある男が、川のそばで木を切っていました。


ところが手が滑って、持っていたオノを川に落としてしまいました。


男はこまってしまい、シクシク泣きました。


オノがないと、仕事ができないからです。


すると、川の中からヘルメスという神さまが出てきて、


ぴかぴかに光る金のオノを見せました。


「おまえが落としたのは、このオノか?」


「ちがいます。わたしが落としたのはそんなにりっぱなオノではありません」


 すると神さまは、つぎに銀のオノを出しました。


「では、このオノか?」


「いいえ。そんなにきれいなオノでもありません」


「では、このオノか?」


 神さまが3番目に見せたのは、使い古したきたないオノでした。


「そうです。そうです。拾って下さってありがとうございます」


「そうか、おまえは正直な男だな」


神さまは感心して、金のオノも銀のオノも男にくれました。


よろこんだ男がこのことを友だちに話すと、友だちはうらやましがって、


「おれも金のオノをもらってこよう」と、さっそくきたないオノを持って川へ出かけました。


そして、「えいっ」と、わざとオノを川に投げると、シクシクうそ泣きを始めました。


そこへ川から神さまが出てきて、ぴかぴか光る金のオノを見せました。


「おまえが落としたのは、このオノか?」


「そうです。そうです。金のオノです。その金のオノを川に落としてしまったんです」


とたんに、神さまは目をつり上げて、「このうそつきのよくばり者め!!」


こわい顔でどなると、川の中へ戻ってしまいました。


うそつきでよくばりのこの友だちは、自分のオノも拾ってもらえず、いつまでも川のそばでワンワン泣いていました。


この話は、神さまは正直な人にはやさしくしてくれるが、それだけに、うそつきにはきびしいたいどをとります。


よくばってうそをつくと、けっきょくは、前よりも損をするのです。