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テングの隠れみの

はなしいてみましょう。

テングの隠れみの
  • 5分0秒
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むかしむかし、彦一(ひこいち)と言う、とても賢い若者がいました。


小さい頃から頭が良くて、随分ととんちが利くのですが、大が付くほどの酒好きで、彦一の夢は、毎日たらふく酒を飲むことです。


彦一はお酒をのむのに、「何か良い方法はないだろうか?」と考えているうちに、ふと、それを被ると姿が消えるという、テングの隠れみのを手に入れて、お酒をのもうと思いつきました。


テングは村はずれの丘に、ときどきやってくるといいます。


彦一はさっそく、ごはんを炊くときに使う、火吹き竹(ひふきだけ)を持って丘に来ました。


彦一は、火吹き竹を望遠鏡(ぼうえんきょう)のように覗いて、丘から見える大阪や京都を見下ろしていると、松の木のそばから声がしました。


「のぞいているのは、望遠鏡ではなく、ただの火吹き竹だろうが」


と、テングの声がしました。


すると彦一は、「これは千里鏡で遠くの者が近くに見える宝だ」と言い張ります。


テングは自分にも覗かせて欲しいと言いました。


彦一はテングがそばに来ているのが分かりました。


彦一が、宝物を渡すわけにいかない、と断ると、そのとたん、目の前に大きなテングが姿を現しました。


テングは彦一に、貸してもらっている間、自分の隠れみのを預けるといいました。


彦一は、テングに火吹き竹を渡し、代わりに隠れみのを受け取りました。


彦一はすばやく隠れみのを身につけると、さっと姿を消しました。


テングは中を覗きましたが、真っ暗で何も映らず、騙されたことに気づきましたが、すでに彦一の姿は影も形もありませんでした。


隠れみのに身を包んだ彦一は、さっそく居酒屋にやってくると、お客のそばにきて、人のお酒をグビグビと飲み始めました。


それを見たお客は、宙に浮かぶお酒をみてビックリしました。


たらふく飲んだ彦一は、ふらつく足で家に帰り、これは便利なものを手に入れた、と満足していました。


次の朝、ゴミだと勘違いした母親に大事なみのを燃やされてしまいました。


彦一はあわててかまどを覗きこんでみると、みのはすっかり燃えつきています。


毎日お酒が飲めると思った彦一ががっかりして、みのの灰をかき集めていると、灰のついた手の指が見えなくなりました。


みのの効き目は灰になってもあることが分かりました。


そうして、体に塗ってまた透明になった彦一は、さっそく、居酒屋に行き、お客のお酒を横取りしました。


それを見たお客は、「目玉が自分のお酒を飲んでいる」と、悲鳴をあげました。


隠れみのの灰を全身にぬったつもりでしたが、目玉にだけは塗っていなかったのです。


お客は、そばにあった水を彦一にかけました。


すると、体に塗った灰がみるみる落ちて、裸の彦一が姿を現したのです。


目玉の化物が彦一だったことがばれて、


彦一は、素っ裸のまま慌てて逃げ帰ったという事でした。