日本語を学ぶ
ふるやのもり
お話を聞いてみましょう。
- 4分30秒
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むかしむかし、雨の降る暗い晩のこと、おじいさんが子どもたちに、話を聞かせていました。
子どもが「一番怖いものは何か」と、おじいさんに聞きました。
おじいさんは、「泥棒」が一番怖いと答えました。
ちょうどその時、泥棒が馬小屋の馬を盗もうと、屋根裏にひそんでいました。
泥棒は、これを聞いてニヤリ。
今度は子どもが「けもので一番こわいものは何か」と、おじいさんに聞きました。
おじいさんは、「オオカミ」が一番怖いと答えました。
そして子どもは「オオカミより怖いものは何か」と、おじいさんに聞きました。
おじいさんは、「ふるやのもり」だと答えました。
馬を食べようと、馬小屋にひそんでいたオオカミは、それを聞いて驚きました。
ふるやのもりとは、古い屋根からポツリポツリもる、雨もりのことです。
だけどオオカミは、そんなこととは知りません。
自分より怖い「ふるやのもり」とはどんな化物だと、ガタガタ震えだしました。
屋根裏の泥棒も、話を聞いて「ふるやのもり」がどんな化物かと、ひざがガクガク震えています。
と、ビクビクのところへ、ヒヤリとした雨もり(ふるやのもり)が、首にポタリと落ちました。
泥棒は足を踏みはずして、オオカミの上にドシン!
「ギャーーッ! ふ、ふるやのもりだっ!」
オオカミはドシンドシンと、あちこちぶつかりながら、馬小屋から飛び出しました。
振り落とされては大変と、泥棒は必死にオオカミにしがみつき、オオカミは振り落とそうと、メチャクチャに走り続けます。
夜明けごろ、泥棒は突き出ている木の枝を見つけて、飛びつき、そのまま高い枝に隠れてしまいました。
オオカミのほうは、背中にくっついていた物がとれて、ホッと一息。
でも、まだ安心できません。「ふるやのもり」はどこかに隠れていると思ったオオカミは、友だちの強いトラに退治(たいじ)してもらおうと思いつき、トラのところまで行きました。
話を聞いてトラも恐ろしくなりましたが、いつも威張っているオオカミの前で、そんなことは言えません。
トラは「ふるやのもり」を退治してくれると、オオカミに約束しました。
トラとオオカミは一緒に、ふるやのもりを探しに出かけました。
すると高い木のてっペんに、なにやらしがみついています。
オオカミはそれを見て、ガタガタと震えだしました。
トラも木にしがみついているのをみて、なんて怖い顔をしているんだと思いましたが、トラは、怖いのを我慢して、「ウォーッ! ウォーッ!」
と、吠えながら木をゆさぶりました。
すると、泥棒が二匹の上にドシン! と落ちてきました。
「キャーン!」「ニャーン!」と、トラとオオカミは、情けない悲鳴をあげながら、逃げて行きました。
泥棒は地面に腰を打ちつけて大ケガをし、オオカミは遠い山奥に逃げ、そしてトラは海を渡って遠い国まで逃げて行って、二度と帰ってはきませんでした。