日本語を学ぶ

ふるやのもり

はなしいてみましょう。

ふるやのもり
  • 4分30秒
  • 0361109828

むかしむかし、雨の降る暗い晩のこと、おじいさんが子どもたちに、話を聞かせていました。


子どもが「一番怖いものは何か」と、おじいさんに聞きました。


おじいさんは、「泥棒」が一番怖いと答えました。


ちょうどその時、泥棒が馬小屋の馬を盗もうと、屋根裏にひそんでいました。


泥棒は、これを聞いてニヤリ。


今度は子どもが「けもので一番こわいものは何か」と、おじいさんに聞きました。


おじいさんは、「オオカミ」が一番怖いと答えました。


そして子どもは「オオカミより怖いものは何か」と、おじいさんに聞きました。


おじいさんは、「ふるやのもり」だと答えました。


馬を食べようと、馬小屋にひそんでいたオオカミは、それを聞いて驚きました。


ふるやのもりとは、古い屋根からポツリポツリもる、雨もりのことです。


だけどオオカミは、そんなこととは知りません。


自分より怖い「ふるやのもり」とはどんな化物だと、ガタガタ震えだしました。


屋根裏の泥棒も、話を聞いて「ふるやのもり」がどんな化物かと、ひざがガクガク震えています。


と、ビクビクのところへ、ヒヤリとした雨もり(ふるやのもり)が、首にポタリと落ちました。


泥棒は足を踏みはずして、オオカミの上にドシン!


「ギャーーッ! ふ、ふるやのもりだっ!」


オオカミはドシンドシンと、あちこちぶつかりながら、馬小屋から飛び出しました。


振り落とされては大変と、泥棒は必死にオオカミにしがみつき、オオカミは振り落とそうと、メチャクチャに走り続けます。


夜明けごろ、泥棒は突き出ている木の枝を見つけて、飛びつき、そのまま高い枝に隠れてしまいました。


オオカミのほうは、背中にくっついていた物がとれて、ホッと一息。


でも、まだ安心できません。「ふるやのもり」はどこかに隠れていると思ったオオカミは、友だちの強いトラに退治(たいじ)してもらおうと思いつき、トラのところまで行きました。


話を聞いてトラも恐ろしくなりましたが、いつも威張っているオオカミの前で、そんなことは言えません。


トラは「ふるやのもり」を退治してくれると、オオカミに約束しました。


トラとオオカミは一緒に、ふるやのもりを探しに出かけました。


すると高い木のてっペんに、なにやらしがみついています。


オオカミはそれを見て、ガタガタと震えだしました。


トラも木にしがみついているのをみて、なんて怖い顔をしているんだと思いましたが、トラは、怖いのを我慢して、「ウォーッ! ウォーッ!」


と、吠えながら木をゆさぶりました。


すると、泥棒が二匹の上にドシン! と落ちてきました。


「キャーン!」「ニャーン!」と、トラとオオカミは、情けない悲鳴をあげながら、逃げて行きました。


泥棒は地面に腰を打ちつけて大ケガをし、オオカミは遠い山奥に逃げ、そしてトラは海を渡って遠い国まで逃げて行って、二度と帰ってはきませんでした。