日本語を学ぶ
【差替待機】裸の王さま①
お話を聞いてみましょう。
- 4分0秒
むかしむかし、あるところに、とても着物の好きな王さまがいました。
新しい着物を作っては、それを着て歩くのが王さまの楽しみです。
ある日の事、服職人を名乗る二人のペテン師がやって来て言いました。
「わたしたちは、とても美しい布をおる事が出来るのです。その布はとても不思議な布で、それで作った着物は、おろか者、つまり馬鹿には見えないのです」
「ほほう。それは面白い。さっそく布をおって、着物を作ってくれ」
王さまは、嬉しそうに言いました。
(その着物を着て歩けば、家来たちが利口者か、おろか者か、すぐに見分けがつくわけだ)
二人の男は布を織るのに必要だと言って、王さまにたくさんのお金を出させると、熱心に布を織り始めました。
とは言っても、本当は布をおっている様な、振りをしているだけなのですが。
「いったい、どんな着物だろう? 早く着てみたいものだ」
王さまは、その不思議な着物を早く着たくてなりません。
そこで大臣に言いつけて、着物がどのくらい出来たかを見にやりました。
さて、布を見に行った大臣ですが、布をおっている二人の男のそばへ行ってみてビックリです。
「???」
何も、見えないのです。
ゴシゴシ、ゴシゴシ。
大臣は目をこすってみましたが、やはり何も見えません。
それに気づいた二人の男は手を休めると、わざとらしく大臣に言いました。
「やあ、これは大臣。どうです、見事な布でしょう。もうすぐ出来上がりますので、王さまにふさわしい、立派な着物に仕上げますよ」
「いや、あの、・・・うむ、そうだな。確かに見事な布だ」
大臣はそう言うと、足早に部屋を出て行きました。
「困ったな、王さまに何て報告すれば良いのだろう?」
大臣は、悩みました。
大臣は今まで、嘘をついた事が一度もありません。
でも正直に見えないと言えば、自分はおろか者だと言う事になり、下手をすれば大臣をやめさせられてしまいます。
そこで、王さまの所へ帰ると、
「まことに見事な布です。もうすぐ出来上がって、着物に縫うそうです」
と、嘘を言いました。
「そうか、それほど見事な布か」
大臣が嘘を言った事がないので、王さまは大臣の言葉を信じました。
そして王さまは、その不思議な布を自分でも見たくなり、あくる日、大臣を連れて見に行く事にしたのです。