日本語を学ぶ
【差替待機】フランダースのイヌ③
お話を聞いてみましょう。
- 3分30秒
そしてアントワープの町へ、子どもの展覧会の一等の発表(はっぴょう)を見に行きました。
「パトラッシュ、一等を取って二百フランもらったら、ぼくたちの住む家を探そうね。そのあとは、お腹いっぱい食べようね」
ネルロもパトラッシュも、このところ水しか飲んでいなかったのです。
(必ず、一等をとってみせる! 一等を取らないと、ダメなんだ!)
でもネルロの夢は、すぐ消えてしまいました。
一等を取ったのはネロではなく、あまり上手ではないけれど色々な色の絵の具をたくさん使って描いた、海の絵だったのです。
ネルロとパトラッシュは、展覧会の会場を重い足どりで出ました。
「ああ、これからどうしたらいいのだろう? もし、お金があったら。うん? どうしたの、パトラッシュ。・・・あっ!」
なんとパトラッシュが、雪の中に埋もれていた財布(さいふ)を見つけたのです。
ネルロがその財布を開けてみると、中には金貨がたくさん入っていました。ネルロは周りを見回しましたが、誰も見ている人はいません。
「これだけあれば家を借りられるし、パンもたくさん買える。たくさんの絵の具も買う事が出来るぞ」
ネルロはその財布を服の中に隠そうとしましたが、ふと、その財布に見覚えがある事に気づきました。
「これは、アロアのお父さんのお財布だ」
ネルロは、アロアのお屋敷へ急ぎました。そしてアロアのお母さんに財布を渡すと、パトラッシュを家の中に押し込んで言いました。
「この財布を見つけたのは、パトラッシュです。ご褒美に、何かうんとおいしい物を食べさせてやってください。そして出来たら、ここで飼ってやってください」
ネルロはそう言うと扉を閉めて、雪の降る夜の中へ駆けていきました。
「ああ、待って、ネルロ!」
アロアとお母さんがネルロを追いかけましたが、ネルロの姿はもう見えませんでした。
雪の町でずっと財布を探していたお父さんは、アロアからネルロの事を聞いて目に涙を浮かべました。