日本語を学ぶ
【差替待機】フランダースのイヌ②
お話を聞いてみましょう。
- 4分0秒
その日からネルロは、お昼ごはんを我慢して、貯まったお金で紙と絵の具を買いました。
ネルロは、パトラッシュに言いました。
「パトラッシュ、ぼくはね、いつか人の心をつかむ、素晴らしい絵かきになるんだ。その時にはね、ぼくはみんなに言うよ。『ぼくはパトラッシュに助けられて、絵描きになれました。一番大切な友だちはパトラッシュです』
パトラッシュは、嬉しそうにネルロを見上げました。
ある日、クリスマスイブの子どもの絵の展覧会(てんらんかい)の事を知ったネルロは、夕暮れ時に切り株に座って一休みする木こりのおじさんの絵を一生懸命(いっしょうけんめい)に描きました。
その展覧会で一等になれば、二百フランという夢のようなお金がもらえるからです。
クリスマスイブの日、ネルロは心をこめて描いた絵を荷車(にぐるま)につんで、パトラッシュと一緒にアントワープの展覧会の会場へ出掛けました。
他のみんなは絵の上に上等な布をかけて、受付(うけつけ)に渡しています。
でもネルロの絵にはボロボロの布がかかっているので、ネルロは恥ずかしそうに下を向きながら受付の女性にそっと手渡しました。
ネルロは雪の積もった町ヘ、パトラッシュと出ました。
「パトラッシュ、もし一等になったら、お腹いっぱい、あったかいスープをあげるからね」
その時、誰が落としたのか、雪の中にお人形が落ちていました。
(誰のかが分かる日まで、アロアに預かってもらおう)
ネルロとパトラッシュは、アロアのお屋敷へ行きました。
そしてネルロが、展覧会に出品した事を話すと、「わあ、ネルロならきっと、一等をとるわ!」と、アロアは喜んで、そのお人形を預かってくれました。
けれどその夜、大変な事にアロアのお屋敷が火事になったのです。
「火をつけたのは、ネルロだろう!」
アロアのお父さんは、嫌いなネルロを疑いました。
そして悲しい事は、まだ続きました。
新しい牛乳屋が来たので、ネルロの仕事がなくなってしまい、そのうえ、病気のおじいさんが死んでしまったのです。
おじいさんのお弔いの済んだ夜、家主(やぬし)がやって来て言いました。
「明日の朝、ここを出て行け!」
朝が来ると、ネルロとパトラッシュは雪の降る外へ出ました。