日本語を学ぶ
【差替待機】フランダースのイヌ①
お話を聞いてみましょう。
- 3分0秒
ある夏の日の事、お父さんもお母さんもいないネルロは、おじいさんと草むらで捨て犬を見つけました。
かわいそうに思ったネルロは犬を家へ連れて帰り、パトラッシュと名付けました。
パトラッシュはすぐにネルロに懐き、二人は兄弟のように仲良くなりました。
ネルロとおじいさんは村のお百姓(ひゃくしょう)さんから牛乳(ぎゅうにゅう)を集めて、10キロ先のアントワープという町まで売りに行く仕事をしていました。
その仕事はとても大変な上に、あまりお金にはなりません。
だからネルロとおじいさんはスープを一杯飲むのがやっとという、とても貧しい暮らしをしていました。
ネルロが七歳になった時、おじいさんが病気になりました。
それからはネルロとパトラッシュで重い牛乳を乗せた荷車を引いて、アントワープまで行くようになりました。
大変な道のりですが、ネルロにはアントワープの町へ行くのが楽しみでした。
それというのもアントワープの町にある大きな教会には、ルーベンスという有名な人の絵が飾ってあるからです。
でも残念(ざんねん)な事に、その絵にはいつも白い布がかかっていて、お金を払わないと見る事は出来ません。
しかしネルロはルーベンスの絵のそばにいられるだけで、嬉しかったのです。
ネルロは絵を見たり描いたりするのが大好きで、大人になったら絵描きになろうと心に決めていました。
ネルロが十五歳になったある日、ネルロは可愛らしくて優しい友だちのアロアを、ぜひ描きたいと思いました。
アロアは丘の上の風車(ふうしゃ)のあるお屋敷に住む、お嬢(じょう)さんです。
アロアのお父さんは貧しい牛乳売りのネルロがアロアと仲良しなのを嫌がっており、なんとかして二人を引き離したいと思っていました。
ある日、ネルロがアロアの姿をえがいてくれるというので、アロアはおしゃれをして出掛けました。
けれどネルロが持っていたのは、板きれと黒い木炭(もくたん)だけです。
「ネルロ、絵の具でえがくんじゃないの?」
「うん、ごめん。これしか持っていないんだ」
「・・・そう」
アロアはちょっぴり残念がりましたが、でもパトラッシュと一緒に描いてもらった絵はとても素敵で、アロアもとても気に入りました。