日本語を学ぶ
【差替待機】しあわせの王子①
お話を聞いてみましょう。
- 4分30秒
むかしむかし、ある町には、美しい『しあわせの王子』の像(ぞう)がありました。
その『しあわせの王子』の体には、金色に光輝く金箔が貼ってあります。
青い瞳はサファイアで、腰の剣には大きいルビーがついています。
町の人たちは、この素晴らしい王子のように幸せになりたいと願いました。
冬が近づいてきた、ある寒いタ方の事です。
町に、一羽のツバメが飛んで来ました。
「ふうーっ。随分と、遅れちゃったな。みんなはもう、エジプトに着いたのかなあ? 今日はここで休んで、明日旅に出よう」
ツバメはしあわせの王子の足元にとまり、そこで眠ろうとしました。
するとポツポツと、しずくが落ちてきました。
「あれれ、雨かな? 雲もないのに、変だな。・・・あっ、王子さまが泣いている。もしもし、どうしたのですか?」
ツバメが尋ねると、王子が答えました。
「こうして高い所にいると、町中の悲しい出来事が目に入ってくるんだ。でもぼくには、どうする事も出来ない。だから泣いているんだよ」
「悲しい出来事?」
「ほら、あそこに小さな家があるだろう。子どもが病気で、オレンジが食べたいと泣いている。お母さんは一生懸命働いているが、貧しくて買えないんだ」
「それは、お気の毒に」
「ツバメくん、お願いだ。ぼくの剣のルビーを、あそこへ運んでおくれよ」
「うん。わかった」
ツバメは王子の腰の剣のルビーをはずして、熱で苦しんでいる男の子の枕元にルビーを置きました。
「辛いだろうけど、頑張ってね」
ツバメは翼で、男の子をそっと仰いで帰ってきました。
王子のところへ帰ってきたツバメは、ある事に気づきました。
「不思議だな。こんなに寒いのに、なんだか体がポカポカするよ」
「それは、きみが良い事をしたからさ。ツバメくん」
次の日、王子はまたツバメに頼みました。
「ぼくの目のサファイアを一つ、才能のある貧しい若者に運んでやってくれないか?」
「でもぼく、そろそろ出発しなくちゃ」
「お願いだ。今日一日だけだよ。ねえ、ツバメくん」
「・・・うん」
ツバメがサファイアを運んでやると、若者は目を輝かせて喜びました。
「これでパンが買える! 作品も、書きあげられるぞ!」
次の日、ツバメは今日こそ、旅に出る決心をしました。