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養老の滝(ようろうのたき)

はなしいてみましょう。

養老の滝(ようろうのたき)
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むかしむかし、美濃の国(みののくに→岐阜県)の山里に、たいへん親孝行(おやこうこう)な若者がいました。


貧乏で毎日の食べる物にも不自由する暮らしでしたが、年取った父親のために一生懸命働いて、少しでも長生きをしてもらおうと思っていました。


その父親は何よりもお酒が好きでしたが、しかし米を買うお金さえろくに稼げないので、お酒など滅多に手に入れる事は出来ません。


それでも息子は父親がお酒を飲むときの幸せそうな様子を思い浮かべると、なんとかしてあげたいと奥山にわけ入って、焚き木を取るのでした。


そんなある日、若者は岩から足を踏み外して、あっと言う間に谷底へ転がり落ちてしまいました。


気を失ってしばらくすると、喉が乾いて目を覚ましました。


体を起こして辺りを見ると、岩影から水の音が聞こえてきます。


若者が駆け寄ると、そこには見上げるばかりの滝が、しぶきを立てて流れ落ちていたのです。


若者は足元に泡立つ水を手にすくって、口に含みました。


何とそれはただの水ではなく、これまで飲んだ事もないような、かぐわしいお酒だったのです。


これを持ち帰れば、父親がどんなに喜ぶ事かと思い、若者は腰に提げたひょうたんにお酒を汲み取ると、急いで家に帰りました。


そして息子はニコニコしながら、ひょうたんのお酒を父親に差し出しました。


一口飲んだ父親は、目を丸くしました。


父親はこんなにおいしいお酒を飲んだ事がない、と大変喜びました。


息子は山奥で起きた不思議な出来事を話して聞かせると、父親は言いました。


「それは、お前がいつも親孝行をしてくれるので、神さまがご褒美にくださったのだよ」


この話は間もなく、奈良の都の天皇(てんのう)の耳に伝わりました。


天皇はたいそう感心すると、若者に山ほどの褒美をくださり、そればかりか年号を「養老(ようろう 717年11月17日に改元)」と改め、滝に「養老の滝」という名を授けたという事です。