日本語を学ぶ
ツルのおんがえし
お話を聞いてみましょう。
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村から少し離れた山里に貧しい、心の優しいおじいさんとおばあさんがいました。
おじいさんは町に出かけていると、途中で、一羽のツルが罠にかかってもがいていたのです。
おじいさんは、気の毒に思って、ツルを逃がしてやりました。
するとツルは、おじいさんの頭の上を三ベん回って、「カウ、カウ、カウ、」と嬉しそうに鳴いて、飛んでいきました。
その夜は大雪でした。
おじいさんがおばあさんに、ツルを助けた話をしていると、表の戸を、トントン、トントンと、叩く音がします。
おばあさんが戸を開けると、頭から雪をかぶった娘が立っていました。
おばあさんは驚いて、寒そうにしていた娘を家に入れてやりました。
おじいさんもおばあさんも、可愛そうに思って、一晩泊める事にしました。
あくる朝、おばあさんが目を覚ますと、娘はもう起きて働いていました。
おばあさんは大変驚き、喜びました。
次の日も、その次の日も大雪で、戸を開けることも出来ず、三人で暮らすことになり、貧しくも楽しい毎日を過ごしました。
ある日、娘が「はた」を織りたいから、糸を買ってくださいと頼みました。
おじいさんが糸を買ってくると、娘ははたの回りに屏風を立てて、「はたを織り上げるまで、決して覗かないでください」と、いって、はたを織り始めました。
キコバタトン、キコバタトン。
娘は三日かけてようやくはたを織り終えました。
「この織り物を町へ売りに行ってくれませんか。」
と、娘は空の雲のように軽い、美しい織り物を二人に見せました。
おじいさんが町へ売りに行くと、それを殿さまが高い値段で買ってくれました。
その晩、娘はまた、はたを織り始めました。
不思議に思って、おじいさんとおばあさんは、屏風の隙間から覗いてみると、瘦せこけた一羽のツルが、長いくちばしで自分の羽毛を引き抜いては、糸に挟んではたを織っていたのです。
キコバタトン、キコバタトン・・・。
はたの音が止んで、前よりも痩せ細った娘が、布を抱えて出てきました。
「おじいさま、おばあさま。わたしは、いつか助けられたツルでございます。ご恩をお返ししたいと思って人間の娘になってきました。いつまでもおたっしゃでいてくださいませ」
そういって鶴の姿に戻っていき、そして、家の上を三ベん回って、「カウ、カウ、カウ」と、鳴きながら、山の向こうへ飛んで行ってしまいました。
おじいさんとおばあさんは、いつまでもいつまでも、ツルを見送りました。
それからのち、二人は娘の織った布を売ったお金で、幸せに暮らしました。